Café Ars  手仕事を味わい、癒される。美しい生活のためのカフェ
 
  目の前にそびえる浅間山。ひたすら青い空。カフェを取り囲む麦畑。中庭に茂るハーブ。ルヴァン美術館の脇道から門をくぐり抜けると、そこには小さな別世界が広がります。観光地の喧噪から離れたこの一角にあるCafé Arsは美しい生活を求める人たちのために、静かに始まりました。
 Café Ars の“ars[アルス]”はラテン語でartの意味。英語よりも意味が広く、人の手が作り出す営み・文化全体を指します。Café Ars の目指すところは、美しい生活です。手仕事を大切にし、そこから生まれるものを分かち合い、その中で自分をリセットして整えていく。その循環のなかに美しい生活が生まれるとわたしたちは考えます。
 この循環を作り出すため、Café Ars は心身ともにリセットできるようなメニューを提供します。非日常的な時間と空間の中、静かに満たされていく感覚を味わうことで、短い滞在でもリフレッシュいただけると思います。
 また味わうだけではなく、メニューで提供するパン、バター、ハム、ベーコン、アイスクリームなどを一緒に作るクッキングリトリートを時々開催します。ふだん作ることのないものを、じっくり時間をかけて一からつくるひとときはわたしたちの生活から失われていたものを取り戻すひとときでもあります。
 Café Arsのある場所は、もともとクリエイター(障がい者)とアトリエリスタ(支援員)、デザイナーの共同作業の手仕事から作品を生み出すartの現場RATTA RATTARRのギャラリーとして始まりました。美しいデザインを生み出す工房と繋がっているからこそ、この場所はわたしたちを別世界へいざなうのです。
 中庭を挟んだ向かいは手仕事によって生み出された家具や道具に囲まれたNATUR Home。NATUR Homeは,美しい生活のイメージを静かに膨らませる場所でもあります。時間という人の手の及ばない加工が施されたアンティークの道具たちの魅力が引き立つのも不思議と手仕事に囲まれた場所です。RATTA RATTARRデザインの作品を購入し、日常生活にここで過ごしたひとときを持ち帰ることも出来ます。
 そもそも軽井沢は宣教師たちが、日々の仕事から一歩退き、英気を養うリトリートの場所として始まりました。北欧の人々がサマーハウスで過ごすようにあえて自然の中での簡素な生活を選んだのです。ここにそれまでの日本人が知らなかった美しい生活がありました。夏だけではなく、年間を通じて賑わうようになった軽井沢ですが、もう一度原点に触れる小さな試みをCafé Arsで出来たらと思っています。
 
Café Arsの基本メニューの紹介をします
 
パン
 何千年も昔から食べられてきたパン。実はわたしたちが思っている以上にそのかたちはたくさんあります。パン・ド・ミ(食パン)やバゲットだけではなく、クレープ、ナン、ピタ、ピザ、春餅などの平たい系統のものもパンです。マリーアントワネットが「お菓子を食べればいいのに」と言ったとされるお菓子も実はパン(ブリオッシュ)です。お米と違って、粉にしてから様々な加工をして食べるパンは、それぞれの地域の気候や伝統を反映した文化そのものなのです。
 Café Arsのパンは、スペルト小麦と呼ばれる古代小麦の一種を使っています。香り高く食味のよいパンが出来るため、化学肥料を使う大量生産向きの品種改良が進んだパン小麦が普及する現代でも廃れることなく、栽培し続けられてきました。近年では小麦アレルギーを発症しにくい,化学肥料・農薬をほとんど使わずに栽培可能など、健康面の理由からも注目されています。
 Café Arsでは、スペルト小麦との相性のよい天然酵母を使ってじっくり発酵させた、素朴でうまみのあるパンだけを手仕事で焼いています。
 
 
バター
 日本を離れてヨーロッパで暮らすと,和食や日本の食材が恋しくなります。でも戻ってくると恋しくなるのが、当たり前のように売られていた発酵バターでした。アメリカや日本では無発酵タイプのバターが主流ですが、ヨーロッパでは乳酸菌を加え,発酵させたバターが主流です。これに慣れてしまうと日本のバターに物足りなさを感じるようになりました。
 そこでCafé Arsでは試行錯誤をくり返し、ヨーロッパのバターに負けない味と香りの発酵バターを手作りし、提供しています。このバターの中では乳酸菌が生きていますから、味だけではなく、ヨーグルトを食べるのと同じように腸内環境を整える効果も期待できます。ランチプレートでは見栄えのしない脇役ですが、このバターも是非じっくり味わっていただきたいと思います。
 
スープ
 定番は2000年以上昔から地中海世界で食べられてきたレンティルのスープ。聖書には双子の兄弟エサウが空腹のあまり、一杯のレンティルのスープで長子の特権を弟ヤコブに譲り渡す物語があります。エサウの過ちの始まりとなったこのレンティルには素朴なレシピから洗練されたレシピまで対応できる深みのあるうまみが詰まっています。
 また夏には、地元で採れた季節の野菜や果物たちから生まれるスープが、滋味あふれる力強い味でからだの細胞のすみずみまでリフレッシュさせてくれます。軽井沢周辺は昼夜の寒暖差が激しく、この気候が野菜、果物の旨みを増し糖度を上げるのです。
 緯度の高いヨーロッパの国々では、日本ではあまり見かけない野菜たちが多く出回っています。ビーツ、根セロリ、スウェード、白ニンジン、コールラビなどの根菜たちは肌寒い季節の冷えた身体を温め、心を満たす素晴らしい味わいのスープになります。標高の高い冷涼な軽井沢周辺は、こうした根菜たちを入手しやすいため、良品が手に入ったときには、スープのメニューに加えています。